< Self Linernotes >
ゆうき (vo/gt)
◉アルバム「あなたのことです」
人に言えない気持ちや、抱えきれない悲しみは歌にするしかないと思っています。綴ることすら憚られるような言葉も、歌にする事でずっと自分を救ってきました。感情は、どれだけ強く色濃いものでも日が経つにつれて薄れていきます。それでも、決して消えはしません。記憶に縛られて息をするのが辛くなった時、歌を歌うと不思議と気持ちが楽になります。そうやって自分の為に歌ってきた歌が、誰かの耳に届いたら良いと思う。人を嫌うには大変なエネルギーがいる。嫌い続けるとなると尚のこと。自分がひどく嫌な奴に思えてどうしようもない時、私の歌で「自分だけじゃないんだ」と思ってもらえたら本望です。どうせ、私のヘイトの対象者達は仮に私の歌を聞いても自分のことだなんて更々思わない。無作為に汚し、傷付ける自分の罪に一生気付かず生きていけばいいよ。一度解散し、再結成。良いことも悪いことも言われました。
嫌な思いもしたけれど、生活からバンドがなくなっていたあの 1 年間の空虚さを思えば、葛藤する今をも幸せに感じます。こゆびで歌いたいという純粋な思いだけで、歌いたい曲を歌う今。作り物の狂気や計算し尽くされた情動への苛立ちも、嘘だと分かっていた優しさに縋るしかなかった弱さも、本当に大切なものを自ら手放してしまった虚しさも、私が今まで感じてきた全てをこのアルバムに注ぎ込みました。
これが、今のこゆびですと胸を張って言える作品です。
❶ 「優等生」 ( 作詞 / 作曲:ゆうき )
壁際の住民達に捧げる曲。暗がりから送られる視線に応える暇はないけれど、ぶつけたい歌は歌うのです。
どこかで聞いたことあるような、見たことあるような、そんな表現は欲してない。全てが及第点の優等生達は、粗探しに精を出す。こんなことしたら面白いですか、こんな風に歌ったら目立ちますか、こんな感じでいいですか。
空気を震わせる自我の強さに目眩がした。没個性のカーニバル。こうするしか出来なかった私には、彼らが眩しくて羨ましかった、のかもしれません。
❷ 「アーティスト」 ( 作詞 / 作曲:ゆうき )
衝動的に書いた歌です。ほとんど悪口です。全面的な批判ではもちろんありません。好きな人がいるからこそ、許せない人も多いのです。自分の事だ、と思う人の事ではない。自分は違う、と思う奴らに向けて歌っています。
黒い服着てれば何でも良いわけじゃないからな。ライブに見入ってる最中何度も横をぶつかりながら通り抜けたお前のことも、アクセサリーみたいに扱っていたお前のことも、ただのツールにしてたお前のことも、絶対忘れない。
想像力のない奴らの創造に興味はないのです。
❸ 「自戒」 ( 作詞 / 作曲:ゆうき )
初めてそのライブハウスに行った時、マネキンがたくさん並んでいるのかと思った。個性的であるがゆえの没個性とは、こんなに滑稽でむず痒く、気恥ずかしいものなのかと、逃げ込んだトイレの鏡にもマネキンが映った。モデルは時代とともに移ろえど、普通から逸脱したいという欲は非常に普遍的だ。その為の手段は様々で、皆手を替え品を替え自分をアピールし続ける。
ただ、結局有名人と寝た事を吹聴する事で自尊心を保つように、他人の人生に群がる彼女たちのゴールって一体どこなんだろう。
くだらなくて、馬鹿馬鹿しくて、愛しくなって気さえする。用法用量守ってこれからも生き続けてください。私も、きっとそうします。
❹ 「トラウマ」 ( 作詞 / 作曲:ゆうき )
一人は好きだけど独りは嫌い、とか踏み込まれたくない領域がある、とか公言するなんてどうかしてる。誰にも言えないけど、って小さな声で囁くお話はどれも本当にしょうもない。自ら人に言えるような秘密ならはなから撒き散らせ。守れない秘密なら作るな。
言葉の響きに任せてるだけならいつか飲み込まれる。知ってる?隠さなくては生きられない痛み。決して口にしてはいけない傷。
あの子の冷たい叫びを搔き消す偽物たちはくそくらえだ。
❺ 「ラブホテル」 ( 作詞 / 作曲:ゆうき )
愛して欲しい。私だけを見てほしい。今だけなんて本当は嫌。明日も明後日も、おじいちゃんおばあちゃんになっても一緒にいたかった。「俺、結婚するんだ。」どうして私じゃだめだったんだろう。どうして私はあの子じゃないんだろう。パリパリのシーツ、ブラックライト、時間制限の中で抱き合う。一生終わらない夢ならいいのに。愛なんてないのに、皮肉だな。もし、あなたがこの曲を聴いても自分のことだなんて思わないでしょう。それで良いんです。それが良いんです。私は歌う度に思い出します。
❻ 「何処へ行く」 ( 作詞 / 作曲:ゆうき )
前だけを見て走ってきました、なんて言えない。何度も迷って、人を羨んで、過去にすがって、それでも足を止めることだけは嫌だった。足元が崩れかかって、次に踏み出す場所が前だか後ろだか分からなくても。狭い世界の中で褒め合って貶め合って、いつか、誰かが自分の叫びに気付いてくれるのをただ、馬鹿面下げて待っているだけだった日々。気付いたら、なりたかった自分、歌いたかった歌、1 番濁らせてはいけないものが分からなくなっていた。周りの人もいなくなった。取り戻した今だから、歌える歌です。